美しい響きとは何か

音楽の要素としてとりわけ大切にされる要素のひとつである「美しい響き」。長い音楽の歴史の中で「美しい響き」を求め続けて作曲家や演奏家、聴衆たちは今日に至っています。

響きの「美しさ」とはどういうものなのか具体的に見ていきましょう。まず、料理のおいしさについて考えてみましょう。口にした時「おいしいな」と感じる料理ではただ「甘い」や、「辛い」といったものだけではないのです。そこには単体では決して心地よくない味覚である「苦昧」や「渋み」といったものもあり、それらが絶妙なバランスによって混ざり合うことで、おいしいと感じる『風味』を作り出しています。音楽での響きの「美しさ」というのも、前述したような料理の「おいしさ」に通ずるものがあるのではないでしょうか。たとえば、「マイクなどの助けなしによく響く声」を理想とするクラシック音楽の世界では、「ベル力ン卜」と呼ばれる唱法があります。イタリアのオペラの魅力はこの「ベル力ン卜」の響きにあるとさえ言えるのですが、「音楽的ではない」とされるような、たとえば噴くような息の混ざった音、話し言葉に近い音程が音階に当てはまらない音など、音楽作品の要求する声には更に別の要素が入ることもあります。それらの色々な響きが、作品の中のあらゆる場所そこにあるべきで用いられることにより、音楽作品の美しさが成立するのでしょう。『「美しい響き」を作り出す』イコール『「美しい音楽」』を生み出すことではないのです。美しい音楽を生み出すために大切なこととは、取り組む音楽作品にそれぞれ適した歌い方を見つけること、そして一番重要なのは、『この音楽作品を通じてどんなことを表現したいか』を第ーに考えることです。